こんばんは。
うえのんEDAXのver0.30で、bookの精度が一目でわかる機能を追加したのでそれの説明をします。
なお、後半とんでもなく難しいので覚悟しておいてください。

(要旨)
今回は評価値のうち、青色部分(=book進行)の話をします。
今まではbookの精度は二段階(水色<青)であったのが、
ver0.30以降、3段階(水色<薄い青<紺)になります。
※ver0.50以降、4段階(水色<薄い青<紺<金色縁取りの紺)になりました。
スクリーンショット (172)
※画像は開発中のものです
図では、C7が紺色、D3F3B6C7F7が薄い青、D8F8が水色です。

■色の特徴
・水色
bookがないよりはマシ程度。評価値が間違っている可能性がある
評価値が奇数の場合は、必ず水色になる

・薄い青
ある程度精度良く計算されている。評価値は正しい可能性が高いが、
海亀数は間違っている可能性が高い(全ての最善進行は計算されていない)

・紺色
非常に精度良く計算されている。評価値に加え海亀数も正しく計算されている可能性が高い
edaxでbook deviate 1 1が終わっている状態と等価。(たぶん)

・金色縁取りの紺(ver 0.50~)
最強。book deviate 3 3が終わっている状態。

■何に使うの?
自分でbookを計算している人向けで、学習させるべき進行を見つける指標になります。
まともなbook(末端が完全読み=ここの要件を満たす)であれば、
学習することで色のグレードを上げることができます。
海亀数を使わないなら薄い青、使うなら紺色にすべきでしょう。

■例
スクリーンショット (172)
さっきの盤面ですが、例としてF7の進行をより深く学習させて
紺色にするにはどうすればいいか考えてみましょう。
スクリーンショット (173)
とりあえずF7を打ってみました。C3も薄い青なのでこの進行が
学習不足なようです。進めます。
スクリーンショット (174)
ちょっと進めて分岐に到達しました。C8は紺色なのでこれ以上学習させる必要はないようです。
なので、C4を見てみます。
※ちなみに、薄い青の進行が複数あったらすべてに対して学習させる必要があります
スクリーンショット (175)
同様にして進めた結果がこちら。ここまで進めると、H5の手がedaxのleafであったとわかります。
この進行が足りないとわかったので、edaxのコマンドから、
forceしてからm 2、またはbook deviateなどのコマンドで学習させてください。
(コマンドの内容は割愛。知らない人はうみがめさんのブログなどを参照すること。)
ちゃんと学習させれば、この進行を紺色にすることができます。
※H5の手は精度が低い手なので、必ずしも引き分けではなく、
学習させた結果2石などになる可能性があることに注意。

■計算時間
海亀数と同じくらいの計算時間がかかります。
bookの読み込みが終わるまで使えないのも同じです。
bookのサイズによりますが200MB以下くらいであれば一瞬でしょう。
一方、2GBを超えるような(展開後に数倍に膨れ上がって)メモリに乗りきらない
やつだとちょっと厳しいです。ディスクスワップが起きると破滅的に遅くなります。
ちなみに計算中の時はver0.20以前と同じ青色で表示されます。

■■■WARNING■■■
以下難しいので苦手な人はブラウザバック推奨。
※leaf、book(完)、book deviate 1 1などのedax用語がわからない人は
先にキロキティアさんの記事で勉強してきてください。

(三色の意味)
・図は、オセロのゲーム木を表しています。
・実線は最善手、二重線は評価値差が±1の次善手または評価値差0のleaf、
破線は評価値差が2以上の悪手(変化)を表します
以下、精度が悪い順にbookを4通りに場合分けします
精度は1 = 2 < 3 < 4です。

■パターン1
book1

・パターン1の特徴
book(完)の数が0で、bookの末端が完全読みラインに達していない。
盤面が参照する評価値はAだが(最善=実線でつながった先なので)、
ここでedaxは完全読みをしていないので間違っている可能性がある。
これとパターン2は、評価値が奇数になる可能性がある(もちろん間違っている)。

■パターン2
boo2

・パターン2の特徴
book(完)があるが、最善ではない進行について完全読みしているので
book精度向上に寄与していない。無駄。(点線は最善手以外を表していることに注意)
例を挙げると
A:虎定石
B:Stephenson
C:BergTiger
で、Cについては確かに精度よく計算されている(図でも薄い青色になっている)が、
A:虎定石の最善はB:Stephensonであり、Cの(正しい)評価値は参照しない。
よって、精度はパターン1と同じで水色である。
ちなみに、ver0.20以前のうえのんEDAXではbook(完)の数をもとに精度を判定していたため
青色の評価になっていたが、精度的には水色にすべきである。(ver0.30で対応)

■パターン3
book3

・パターン3の特徴
最善進行が最低一つ以上完全読みに達している。(パターン2との違い)
一方、A、Bのような「最善進行候補」の進行が未計算のleafとして残っている。
(A、Bをつなぐ二重線は評価値差が0~1であることに注意。)
海亀数は、これらの分岐についても計算されるべきなので間違っている可能性が高い。
ところでCは点線(評価値差が2以上)なので学習したとしても2の差がひっくり返る可能性は低く、
そのためDの精度は高い(紺色になっている。)

■パターン4
book4

・パターン4の特徴
パターン3までの特徴に加えて、紺色のノードからは二重線が生えていない。
紺色の配下は±1石の範囲のすべての進行がbookに登録された状態。
全て(に近い)分岐が登録されていると期待できるので、海亀数も信頼できる。
edaxのbook deviate 1 1の1回目の試行で選択される盤面は、
その定義により二重線ノードに対応するが、
そんな盤面はパターン4にはないのでbook deviate 1 1はすぐに止まる。

以上。ちょっと複雑だけど普通に使う分には分からなくても特に問題ない話でした。