こんばんは。意外と需要ありそうなので今回は海亀数の利用方法について2回の連載で書きます。
今回は、前編ということで、海亀数を語る上での前提とか理屈の話をしようと思います。
後編では、海亀数を使って、実際に進行を比較し定石研究してみます。
文字ばっかりだと人が逃げていきそうなので図を出しますが、

まず、うえのんEDAXで右下の「海亀」ボタン(またはUキー)を押すと海亀数表示モードになります。わかりやすいですねww
海亀数とは何かというと、
「お互いが(最善しか打たない)暗記オセラーの場合に、お互いが暗記しないといけない進行の数」
です。図の虎大量(c5)は黒49:1白になってますが、
(※49の下によく見ると黒い帯が見えると思います:黒が49という意味です)
虎大量を黒が全暗記するには49パターンの暗記が必要という意味です(30手目までで)
虎大量からローズビルに進む進行は、FJT/酉/金魚をはじめとして白から一方的に分岐が多いので、
黒が一方的に暗記を強いられます。つらいです。その数が49あるってことですね。
逆に、白はたくさんある分岐の中で適切なやつを選べば、
黒から分岐の選択肢を与えずに30手目まで打ち切れるってことです。(白の暗記数:1なので)
基本的に、自分の暗記数は少なく、相手の暗記数は多くするように打つのがいいとされています。
(そうすると数学的に最も分岐数を絞れる)
例:

初期局面です。黒の暗記数が52通り(覚えるのむり)もある反面、白はたった4通りで済みます。
※実は計算の方法が悪くて猫系⇒虎定石と虎系⇒虎定石を別に数えているため実質2通り(虎大量・stephenson)だったりする・・・
なので、分岐の数的な面ではオセロは圧倒的に白有利です。
縦取り全最善オセラーが流行るのはだいたいこれのせい。
ちなみに、「現代オセロの最新理論 P190 コラム3 下の方」より引用
"オセロは序盤さえ白が有利で、黒からの有効な手段が意外に限られてくる"
とはまさに分岐数の事を話しているのだと思われます。

さて、お互いが海亀数的な最善だけを打つとどうなるでしょうか?こうなります。
図は研究熱心な人ならレート1800くらいの人でも見たことあるんじゃないでしょうか。
FJTからの非常に有名な最善進行になります。
このように、海亀数がいい手のことを分岐優勢といい、
お互いが分岐優勢な手を打つ進行の事をパレート最適または調和理論といいます。
(どちらもうみがめさん命名?調和理論の記事が黒歴史っぽかったから新しい名前を付けて闇に葬りたかったのだろうか・・・)
パレート最適な進行は、そうでない引き分け進行よりも(お互いに暗記が少なく有力なため)
打たれる可能性が高いです。
例:

Rose-v-Toth(C4)は海亀数的に戦車に進む進行(C6)より大差で優れるため、
どちらも引き分けにもかかわらず、C4に打ってくる可能性が圧倒的に高い。
例外:

例外です。海亀数的には、虎大量のほうが若干優れる評価になる。
(※うえのんEDAXでは、最もいい手が水色で表示されます)
が、体感的にはstephenson(F6)のほうが多く打たれると思いませんか??
これは、海亀数は、引き分け進行しか考えてないので、非常に優秀な-2変化である
たまプラ~ザ、ロジステロ流などが抜け落ちているためstephensonの評価が下がっているからです。
■新指標:広義海亀数
さきほどのstephenson問題を解決するために、0進行だけではなく、-2進行もカウントするように
海亀数の定義を拡張しましょう。以下評価値(-2~0)の海亀数と書きますが、これは
(黒の評価値が-2=黒の2石変化)~(0:引き分け)の範囲で集計した海亀数とします。
この書き方だとコンポスは0,ロジステロは-2、ミサイルは+6・・・になります(符号に注意)
さて、広義海亀数ですが、お手持ちのうえのんEDAXで出すことができます(ダイマ)。
(棋譜BoxやDroidShimaxは現在対応してない模様・・・)

海亀ボタンの右にある謎の数字が実はこの広義海亀数の範囲指定だったのです!!
近くにある「+」「-」ボタンで-2~0に合わせれば、
たまプラ~ザ、ロジステロ流などを含んだstephenson
vs
黒からの2石変化(金魚に対する「りと虎」など。あっくん定石は残念ながら-4なので含まれない)
で戦わせることができます。結果は互角(両方とも水色表示。一長一短)でした。
実は、広義海亀数を使うと評価値が違う進行同士も比べることができます。
f8コンポス vs たまプラ や ヘビ最善 vs つちのこ や ローズ vs 横うさぎ とかですね。
これは実際に結果を見せるのが速いと思うので、後編(実践編)で実演します。
■新指標その2:補正海亀数

さて、図のSローズを考えてみましょう。
(さりげなく広義海亀数を使っていて-2と-4を比較していますが・・・)
やはり、普通は評価値がいい進行のほうが分岐優勢になるんですが、
-2進行のほうが分岐優勢だそうです。
ところで、ここのE7(兜割り)は海亀数的にはパッとしませんが、
すぐに暗記が切らされたりした経験はないでしょうか?
分岐優勢じゃないのにすぐ暗記切れるってどういうことなんだと。
これは、兜割りが比較的打たれない(レア)なため、対策がおろそかになるからです。
一般に、進行Aが打たれる確率が進行Bの1/10なら、進行AはBより10倍くらい覚えにくいと思いませんか?
うえのんデータベースでは、打たれる確率は
B4(為則ローズ、-2):65% 黒10:12白
G5(ローテーション、-2):18% 黒7:7白
E7(兜割り、-4):6% 黒9:1白
です。
(※縦取りあんまりやらないのでN=60くらいでサンプル少ない・・・
相当誤差あると思うが今回は例ってことで。)
兜割りは、為則ローズより11倍打たれにくいので、覚えるコスト(海亀数の白の必要暗記数)
を11倍にする補正をかけるのが妥当と思います。これを、補正海亀数といいます(今名付けた)
補正海亀数は、
B4(為則ローズ):65% 黒10:12白
G5(ローテーション):18% 黒7:25白
E7(兜割り):6% 黒9:11白
となって、G5(ローテーション) > B4(為則ローズ) ≒ E7(兜割り) の評価になりました。
ある程度、人間の感覚に近いのではないでしょうか。
ところで、今の議論を聞いて、評価値悪くてもレアな場所に打てばいいんでしょ
と感じた人はいませんか?着眼点は素晴らしいですが、残念ながらは正しくないのです・・・

図は、-6~0の進行を比較する目的なので広義海亀数の範囲を(-6~0)にしてます。
最善が 3:158という見慣れない値になってますが正しいです。
これで、0石、2石、4石、6石の進行を比べてみます。
0石 黒3:158白
2石 黒5:16白
4石 黒9:6白
6石 黒15:1白
黒の変化が大きくなるほど、指数関数的に分岐優勢度は悪化し、
0石と6石では800倍も差がついてしまうことになります。
(4石や6石のbookは正確ではないので正確な値ではない。目安と思ってほしい。)
図のC5がいくらレアだといっても、さすがに800倍の差は埋められません。
うみがめさんがブログで、「不利な進行は深く暗記するのが困難になる」
と書かれてましたが、まさにこのことを言っていると思います。
無策な変化はただ不利になるだけなのです(形が人間的に打ちやすくなる場合を除く)。
さっきの兜割りの例のように、有力な変化は意外と限られます。
さて、大分長くなったので前編はここまでにします。
後編は主に広義海亀数を使って、主要な進行同士を比較したいと思います。
f8コンポス vs たまプラはどっちが分岐優勢?みたいな具体的な話をするので、
前編がいまいちわからなかった人も大丈夫です。
今回は、前編ということで、海亀数を語る上での前提とか理屈の話をしようと思います。
後編では、海亀数を使って、実際に進行を比較し定石研究してみます。
文字ばっかりだと人が逃げていきそうなので図を出しますが、

まず、うえのんEDAXで右下の「海亀」ボタン(またはUキー)を押すと海亀数表示モードになります。わかりやすいですねww
海亀数とは何かというと、
「お互いが(最善しか打たない)暗記オセラーの場合に、お互いが暗記しないといけない進行の数」
です。図の虎大量(c5)は黒49:1白になってますが、
(※49の下によく見ると黒い帯が見えると思います:黒が49という意味です)
虎大量を黒が全暗記するには49パターンの暗記が必要という意味です(30手目までで)
虎大量からローズビルに進む進行は、FJT/酉/金魚をはじめとして白から一方的に分岐が多いので、
黒が一方的に暗記を強いられます。つらいです。その数が49あるってことですね。
逆に、白はたくさんある分岐の中で適切なやつを選べば、
黒から分岐の選択肢を与えずに30手目まで打ち切れるってことです。(白の暗記数:1なので)
基本的に、自分の暗記数は少なく、相手の暗記数は多くするように打つのがいいとされています。
(そうすると数学的に最も分岐数を絞れる)
例:

初期局面です。黒の暗記数が52通り(覚えるのむり)もある反面、白はたった4通りで済みます。
※実は計算の方法が悪くて猫系⇒虎定石と虎系⇒虎定石を別に数えているため実質2通り(虎大量・stephenson)だったりする・・・
なので、分岐の数的な面ではオセロは圧倒的に白有利です。
縦取り全最善オセラーが流行るのはだいたいこれのせい。
ちなみに、「現代オセロの最新理論 P190 コラム3 下の方」より引用
"オセロは序盤さえ白が有利で、黒からの有効な手段が意外に限られてくる"
とはまさに分岐数の事を話しているのだと思われます。

さて、お互いが海亀数的な最善だけを打つとどうなるでしょうか?こうなります。
図は研究熱心な人ならレート1800くらいの人でも見たことあるんじゃないでしょうか。
FJTからの非常に有名な最善進行になります。
このように、海亀数がいい手のことを分岐優勢といい、
お互いが分岐優勢な手を打つ進行の事をパレート最適または調和理論といいます。
(どちらもうみがめさん命名?調和理論の記事が黒歴史っぽかったから新しい名前を付けて闇に葬りたかったのだろうか・・・)
パレート最適な進行は、そうでない引き分け進行よりも(お互いに暗記が少なく有力なため)
打たれる可能性が高いです。
例:

Rose-v-Toth(C4)は海亀数的に戦車に進む進行(C6)より大差で優れるため、
どちらも引き分けにもかかわらず、C4に打ってくる可能性が圧倒的に高い。
例外:

例外です。海亀数的には、虎大量のほうが若干優れる評価になる。
(※うえのんEDAXでは、最もいい手が水色で表示されます)
が、体感的にはstephenson(F6)のほうが多く打たれると思いませんか??
これは、海亀数は、引き分け進行しか考えてないので、非常に優秀な-2変化である
たまプラ~ザ、ロジステロ流などが抜け落ちているためstephensonの評価が下がっているからです。
■新指標:広義海亀数
さきほどのstephenson問題を解決するために、0進行だけではなく、-2進行もカウントするように
海亀数の定義を拡張しましょう。以下評価値(-2~0)の海亀数と書きますが、これは
(黒の評価値が-2=黒の2石変化)~(0:引き分け)の範囲で集計した海亀数とします。
この書き方だとコンポスは0,ロジステロは-2、ミサイルは+6・・・になります(符号に注意)
さて、広義海亀数ですが、お手持ちのうえのんEDAXで出すことができます(ダイマ)。
(棋譜BoxやDroidShimaxは現在対応してない模様・・・)

海亀ボタンの右にある謎の数字が実はこの広義海亀数の範囲指定だったのです!!
近くにある「+」「-」ボタンで-2~0に合わせれば、
たまプラ~ザ、ロジステロ流などを含んだstephenson
vs
黒からの2石変化(金魚に対する「りと虎」など。あっくん定石は残念ながら-4なので含まれない)
で戦わせることができます。結果は互角(両方とも水色表示。一長一短)でした。
実は、広義海亀数を使うと評価値が違う進行同士も比べることができます。
f8コンポス vs たまプラ や ヘビ最善 vs つちのこ や ローズ vs 横うさぎ とかですね。
これは実際に結果を見せるのが速いと思うので、後編(実践編)で実演します。
■新指標その2:補正海亀数

さて、図のSローズを考えてみましょう。
(さりげなく広義海亀数を使っていて-2と-4を比較していますが・・・)
やはり、普通は評価値がいい進行のほうが分岐優勢になるんですが、
-2進行のほうが分岐優勢だそうです。
ところで、ここのE7(兜割り)は海亀数的にはパッとしませんが、
すぐに暗記が切らされたりした経験はないでしょうか?
分岐優勢じゃないのにすぐ暗記切れるってどういうことなんだと。
これは、兜割りが比較的打たれない(レア)なため、対策がおろそかになるからです。
一般に、進行Aが打たれる確率が進行Bの1/10なら、進行AはBより10倍くらい覚えにくいと思いませんか?
うえのんデータベースでは、打たれる確率は
B4(為則ローズ、-2):65% 黒10:12白
G5(ローテーション、-2):18% 黒7:7白
E7(兜割り、-4):6% 黒9:1白
です。
(※縦取りあんまりやらないのでN=60くらいでサンプル少ない・・・
相当誤差あると思うが今回は例ってことで。)
兜割りは、為則ローズより11倍打たれにくいので、覚えるコスト(海亀数の白の必要暗記数)
を11倍にする補正をかけるのが妥当と思います。これを、補正海亀数といいます(今名付けた)
補正海亀数は、
B4(為則ローズ):65% 黒10:12白
G5(ローテーション):18% 黒7:25白
E7(兜割り):6% 黒9:11白
となって、G5(ローテーション) > B4(為則ローズ) ≒ E7(兜割り) の評価になりました。
ある程度、人間の感覚に近いのではないでしょうか。
ところで、今の議論を聞いて、評価値悪くてもレアな場所に打てばいいんでしょ
と感じた人はいませんか?着眼点は素晴らしいですが、残念ながらは正しくないのです・・・

図は、-6~0の進行を比較する目的なので広義海亀数の範囲を(-6~0)にしてます。
最善が 3:158という見慣れない値になってますが正しいです。
これで、0石、2石、4石、6石の進行を比べてみます。
0石 黒3:158白
2石 黒5:16白
4石 黒9:6白
6石 黒15:1白
黒の変化が大きくなるほど、指数関数的に分岐優勢度は悪化し、
0石と6石では800倍も差がついてしまうことになります。
(4石や6石のbookは正確ではないので正確な値ではない。目安と思ってほしい。)
図のC5がいくらレアだといっても、さすがに800倍の差は埋められません。
うみがめさんがブログで、「不利な進行は深く暗記するのが困難になる」
と書かれてましたが、まさにこのことを言っていると思います。
無策な変化はただ不利になるだけなのです(形が人間的に打ちやすくなる場合を除く)。
さっきの兜割りの例のように、有力な変化は意外と限られます。
さて、大分長くなったので前編はここまでにします。
後編は主に広義海亀数を使って、主要な進行同士を比較したいと思います。
f8コンポス vs たまプラはどっちが分岐優勢?みたいな具体的な話をするので、
前編がいまいちわからなかった人も大丈夫です。
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